メルセデスAMG F1、欧州全戦で電動トラック導入へ。F1史上初のシーズン全期間運用

【ポイント】
・F1史上初となる電動トラックによる欧州全戦物流網
・約1万5000kmを走破するゼロエミッション輸送革命
・2030年ネットゼロ実現へ加速する持続可能な挑戦

メルセデスAMG・ペトロナスF1チームは2026年6月3日、2026年F1欧州シーズン全9戦において、メルセデス・ベンツ・トラックの大型電動トラック「eアクトロス600」を運用すると発表しました。F1グリッド上で、電動トラックを欧州シーズン全体の物流に投入する初のチームとなります。

eアクトロス600は、2026年モナコGPから9月中旬のマドリード戦までの約3か月間にわたり運行され、総走行距離は約1万5000kmに達する見込みです。レース用トレーラーの1台を牽引しながら、チームの重要な運営設備を各サーキットへ輸送します。

今回導入されるeアクトロス600は、2025年シーズンに実施された実証運用の成果を踏まえたものです。2025年のイギリスGPへの試験投入に続き、オランダGPではブラクリーからザントフォールトまでW16マシンを電力のみで輸送する業界初の取り組みを成功させていました。

2026年シーズンでは、その運用規模を大幅に拡大。モナコからマドリードまで欧州全9戦をカバーすることで、長距離電動輸送技術の信頼性と実用性を示します。

eアクトロス600は、すでにブラクリーからモナコまで1600km以上の初回輸送を完了しています。車両はチームの通信オフィスや医療スタッフ用スペース、フィジオルームなど、レース運営に欠かせない重要インフラの輸送を担当します。

パワートレインには、実使用容量600kWhのリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを搭載。1回の充電で最低500kmの航続距離を実現します。また、メガワット充電システム(MCS)に対応し、バッテリー残量20%から80%までを約25分で急速充電できることも大きな特徴です。長距離輸送と迅速なターンアラウンドが求められるF1物流において、高い実用性を備えています。

今回の取り組みは、チームの持続可能な物流戦略の一環でもあります。eアクトロス600は、既存のHVO100バイオ燃料を使用するレースおよびマーケティング用トラック群とともに運用されます。

2025年シーズンには、欧州で運行するレースおよびマーケティングトラックの99%がHVO100燃料に対応し、410トンを超えるCO₂換算排出量の削減を達成しました。電動トラックの本格導入により、従来のディーゼル輸送に代わる低排出物流の選択肢をさらに拡大し、2030年までに「Race Team Control Net Zero」を達成するという目標を後押しします。

F1は世界各地を転戦するグローバルスポーツであり、物流分野は脱炭素化が最も難しい領域の一つとされています。その中でメルセデスAMG・ペトロナスF1チームは、パイロット運用からわずか1年で欧州全戦への本格展開を実現しました。

モータースポーツの最高峰であるF1の現場で、長距離電動輸送が実運用段階に入ったことを示す今回の取り組みは、物流業界全体の電動化にも大きな影響を与える事例となりそうです。eアクトロス600はすでに市場投入されている長距離向け電動トラックとして、持続可能な輸送の新たな基準を示しています。

【ひとこと解説】
メガワット充電システム(MCS)
は、主に大型トラックや長距離バスなど商用EV向けの超高出力急速充電規格で、最大1〜3メガワット級の電力供給を可能にする次世代標準です。従来のCCS(数百kW)を大きく上回る出力により、重量物輸送EVでも30分未満で実用的な航続回復が可能になります。コネクター形状・通信方式・安全要件はCharINが国際標準化を進めており、冷却ケーブルで高電流を安定供給できるのが特徴です。欧米を中心に実証が進み、将来のゼロエミッション物流インフラの中核技術として期待されています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次