メルセデス・ベンツ VLE、スペイン・ビトリア工場で量産開始。800V技術と700km超航続で「グランドリムジン」の新時代へ

【ポイント】
・800Vシステムと700km超航続が切り拓く電動ラグジュアリー革命
・新世代「Van Architecture」初採用による未来の商用・乗用車戦略の幕開け
・カーボンニュートラル工場が実現する持続可能な次世代生産体制

メルセデス・ベンツ・バンは2026年6月12日、スペイン・ビトリア工場において、新型電動グランドリムジン「メルセデス・ベンツ VLE」の量産を開始しました。価格や市場投入時期については今回の発表では明らかにされていません。

VLEは、メルセデス・ベンツが新たに開発した「Van Architecture(バン・アーキテクチャー)」を採用する初の市販モデルです。このプラットフォームはモジュール構造を採用し、さまざまなパワートレインへの対応が可能な柔軟性を備えています。今後は、乗用モデルから商用モデルまで、メルセデス・ベンツ・バンの幅広いラインアップの技術基盤となる予定です。

今回、VLEの量産を開始したビトリア工場は、メルセデス・ベンツのグローバル生産ネットワークにおいて初めてこの新世代車両を製造する拠点となりました。中国市場向けモデルについては、2026年末から中国・福州工場での生産開始が予定されています。

新型VLEは、3月に世界初公開された電動グランドリムジンです。セダンのような乗り心地と優れた走行性能に加え、MPVならではの広い室内空間や高い実用性を融合。最大8名乗車に対応し、WLTPモードで700kmを超える航続距離を実現するとしています。

パワートレインには、800Vアーキテクチャーを採用。これにより超急速充電への対応が可能となり、高い効率性と利便性を両立しています。参考値として公表された「VLE 300 electric」の電力消費量は18.4〜20.7kWh/100km、CO₂排出量は0g/km、CO₂クラスはAとされています。

また、インテリジェントな車載OS「MB.OS」も導入されました。運転支援システム、インフォテインメント、走行性能制御など、車両のあらゆる領域を統合管理する新世代システムとして、メルセデス・ベンツのデジタル体験を新たな段階へ引き上げます。

VLEの生産開始にあたり、ビトリア工場では大規模な刷新が行われました。新設されたボディショップや塗装工場、組立ラインに加え、物流システムやITインフラも全面的に近代化。これにより、複数のパワートレインを同一ラインで生産できる柔軟な生産体制が構築されています。

この変革は、Vクラス、ヴィト、eヴィトといった既存モデルの生産を継続しながら実施されました。約5,000人の従業員が携わり、新技術や新素材、IT基準などに対応するため、160以上の研修プログラムが実施されたことも特徴です。

さらに、ビトリア工場は生産面におけるサステナビリティも追求しています。同工場は2022年からカーボンニュートラルを達成しており、再生可能エネルギー由来の電力、地熱エネルギー、ボディ製造や塗装工程から発生する廃熱を活用しています。

新設された建屋はすべて「Zero-Emission Building Standard(ZEB)」に準拠。加えて、太陽光発電設備も導入され、自家発電による再生可能エネルギーの利用を推進しています。

2026年秋には、新たな塗装工場の稼働も予定されています。この施設は主に電力で運営され、建物の運用から生産プロセスに至るまで、再生可能エネルギー由来の電力のみを使用。化石燃料を完全に排除することで、従来の塗装工程よりも直接的なCO₂排出量を大幅に低減するとしています。

メルセデス・ベンツVLEの量産開始は、新型車投入にとどまらず、電動化、デジタル化、持続可能な生産体制を融合した次世代バン戦略の象徴といえるでしょう。ビトリア工場は、その最前線として、メルセデス・ベンツ・バンの未来を支える重要な拠点となります。

【ひとこと解説】
800Vアーキテクチャー
は、EVの駆動系と充電系を従来の400Vの倍となる800Vで動作させる高電圧システムです。電圧を高めることで同じ出力でも電流を半減でき、発熱の低減・配線の細径化・効率向上が可能になります。とくに急速充電では大きな利点があり、350kW級の高出力チャージャーに対応することで、10〜20分程度で大容量バッテリーを大きく回復できるのが特徴です。また、インバーターやモーターの高効率化により、連続高負荷走行時の性能安定性も向上。ポルシェ、ヒョンデ/キア、アウディなども採用し、次世代EVの基盤技術として広がりつつあります。

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