メルセデス・ベンツ、革新的アキシャルフラックスモーターの量産開始。電動パフォーマンスの新時代へ

【ポイント】
・世界初35工程が切り拓く量産革命の幕開け
・0-100km/h加速2.1秒が示す電動性能の新境地
・120年以上の歴史を持つ工場が担う未来への変革
メルセデス・ベンツは2026年6月9日、ドイツ・ベルリン=マリエンフェルデ工場において、新開発のアキシャルフラックスモーターの大規模量産を開始したと発表しました。120年以上の歴史を持つ同工場にとって、新たな時代の幕開けとなる重要な取り組みです。
この革新的な電動パワートレインは、新型メルセデスAMG GT 4ドアクーペに初採用されます。アキシャルフラックスモーターは、従来のラジアルフラックスモーターとは異なり、電磁束が回転軸に対して平行に流れる構造を採用。ローターとステーターを円盤状に配置することで、極めてコンパクトな設計と高出力・高トルク密度を実現しています。

量産体制は約3万平方メートルの生産エリアに、3つのホールと7本の生産ラインを配置。製造工程は全98ステップに及び、そのうち65工程はメルセデス・ベンツとして初めて導入されるものです。さらに35工程は世界初となる技術であり、関連技術について30件以上の特許出願が行われています。高精度レーザー技術、AIを活用した品質管理、知能化された制御システムなどが融合した最先端の製造現場となっています。
特に注目されるのが、ステーターに採用される角形銅線です。丸線よりも限られたスペースに多くの銅を配置できる一方、高速かつ高精度な曲げ加工が必要となります。メルセデス・ベンツはパートナー企業と共同で専用製造プロセスを開発し、量産化を可能にしました。
また、銅線同士の接続には高精度レーザー接合技術を採用。極めて狭いスペースの中で、周辺部品への熱影響を抑えながら短時間で接合を行います。さらに樹脂部品の接合には、AIによる画像認識を活用したレーザー溶接技術を導入。部品位置をリアルタイムで把握し、保護領域を仮想設定することで、必要箇所のみにレーザーを照射します。

最終組み立て工程では、「ウェディング」と呼ばれる工程を実施します。ステーターを2枚のローターで挟み込む際には、最大9kN(約900kg相当)の磁力が作用します。その中でもステーター位置の許容誤差は0.1mm未満に抑える必要があり、最終0.5秒間で制御アルゴリズムが高頻度補正を行うことで高精度な組み付けを実現しています。
YASAが開発した基本技術を基盤に、2021年の完全子会社化以降、メルセデス・ベンツは自動車向け量産技術として進化させてきました。フロントアクスル用モーターは1万5000rpm以上の高回転性能を発揮します。
新型メルセデスAMG GT 4ドアクーペでは、フロントモーターの幅は9cm未満、リアモーターは各8cm程度というコンパクト設計を実現。これら3基のモーターは、コンパクトな遊星ギアと統合された「HP.EDU(ハイパフォーマンス・エレクトリック・ドライブユニット)」として搭載されます。
その性能は圧倒的です。0-100km/h加速は最短2.1秒、ドライバーズパッケージ装着車の最高速度は300km/hに達します。また、技術実証車「コンセプトAMG GT XX」は、ナルド・テストコースで7日13時間にわたり4万km以上を走破し、25の長距離記録を樹立しました。
今回の量産開始は、ベルリン=マリエンフェルデ工場を高性能電動モーター生産の中核拠点へと進化させる重要な一歩です。デジタル生産技術、高性能電動ドライブ、知能化された自動化技術を融合し、メルセデス・ベンツは次世代の電動パフォーマンスカー開発を加速させています。
【ひとこと解説】
YASAは2009年にオックスフォード大学発のスタートアップとして設立された、アキシャルフラックス型電動モーターの先端企業です。従来のラジアル型より小型・軽量・高トルクを実現し、独自のYokeless And Segmented Armature(ヨークレス&分割アーマチュア)構造によって高効率と製造性を両立しています。同社は2021年にメルセデス・ベンツの完全子会社となり、AMG向け次世代EVモーター開発を担っています。GIGAZINE(ギガジン)2025年には重量12.7kgで750kW超という驚異的な出力を達成し、出力密度59kW/kgという非公式世界記録を更新しました。YASAの技術はフェラーリ296 GTBやランボルギーニの最新モデルにも採用されており、今後の高性能EVの中核技術として期待されています。
















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