ポルシェ・トランスアクスルモデルの軌跡

1975年から1995年にかけて、924、928、944、968は、フロントエンジンとリアトランスミッションを組み合わせた「トランスアクスル方式」を採用し、ポルシェの新たな時代を築きました。これらのモデルは販売面で成功を収めただけでなく、モータースポーツや映画、著名人のコレクションなど、幅広い分野で存在感を示しました。944は当時のポルシェ史上最多販売を記録し、968は最も希少な量産モデルの一つとなりました。そして1995年、トランスアクスル時代は幕を閉じました。

ポルシェ924
1975年
11月、フランス・ラ・グランド・モットでポルシェ924のプロトタイプが公開されました。
1976年
量産を開始しました。水冷フロントエンジンとトランスアクスルレイアウトを採用した新たなエントリーモデルとして販売されました。
1977年
生産開始からわずか1年で、ポルシェの生産台数の2台に1台が924となりました。前年に935と936で獲得した世界スポーツカー選手権を記念し、3,000台限定の特別仕様車も登場しました。
1978年
911や928との性能差を埋めるため、924ターボが登場しました。同年、15歳の天才テニス少女、トレイシー・オースチンがポルシェ・テニス・グランプリで優勝し、副賞として924を受け取りました。
1979年
オースチンは再び優勝し、924ターボを獲得しました。フランクフルトモーターショーでは、406台限定の924カレラGTが発表され、元ビートルズのジョージ・ハリスンも所有しました。
1981年
ル・マン24時間レースに924カレラGTPが参戦しました。実際には944の技術を採用していましたが、944が未公認だったため924としてエントリーし、クラス3位、総合7位を獲得しました。
1982年
924はドイツ警察車両としても採用され、サイレンや無線機を装備した仕様が登場しました。同年、累計10万台生産を達成しました。
1985年
2.5リッターエンジンと150PSを搭載する924Sが登場しました。
1987年
924Sは160PSへと出力を向上させる最後の改良を受けました。
1988年
最後の924が生産されました。累計生産台数は15万台を超えました。

ポルシェ928
1977年
ジュネーブモーターショーで928が世界初公開されました。最大240PSのV8エンジンを搭載し、「ヴァイザッハ・アクスル」を採用しました。この技術思想は現在のスポーツカーにも受け継がれています。
1978年
928はスポーツカーとして唯一、「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。また、ゲルハルト・プラットナーが総距離3万kmに及ぶ耐久走行を達成しました。
1982年
928Sはイタリア・ナルドのテストコースで24時間に6,033kmを走破し、平均速度251.4km/hの記録を打ち立てました。
1983年
映画『リスキー・ビジネス』でトム・クルーズと共演し、「Porsche. There is no substitute.(ポルシェに代わるものはない)」という言葉を不朽の名言として世に広めました。
1986年
320PSを発生する928S4が登場しました。オプションで携帯電話も用意されました。
1988年
120kg軽量化したクラブスポーツ仕様が追加されました。
1989年
330PSの928GTが発売されました。
1991年
350PSを誇る928GTSが登場しました。
1995年
928の生産が終了しました。累計生産台数は約6万1,000台でした。

ポルシェ944
1981年
944が世界初公開されました。163PSの4気筒エンジンを搭載し、初年度だけで3万台の受注を獲得しました。
1983年
944はポルシェ全体の生産台数の約51%を占めるまでになりました。
1984年
944ターボが米国オハイオ州の24時間レースで42周差をつけて優勝しました。
1985年
レースでの成功を受け、944ターボが正式に発売されました。
1986年
190PSの944Sが追加され、944ターボカップも開幕しました。
1987年
944ターボに300km/h表示のスピードメーターが採用されました。また、944Sは38万4,400kmに及ぶ「ルナ・プロジェクト」に挑戦し、最終的に50万kmを走破しました。
1988年
211PSの944S2が登場しました。1,000台限定の944ターボSは261km/hを記録し、当時世界最速の4気筒量産車となりました。
1989年
250PS仕様が通常の944ターボにも展開され、カブリオレも追加されました。
1991年
944ターボカブリオレが登場しました。528台のみが生産され、当時世界最速の4気筒オープンカーとなりました。同年、944の生産が終了し、累計生産台数は16万3,302台に達しました。これは当時のポルシェ史上最多販売記録でした。

ポルシェ968
1991年
944の後継として968が登場しました。240PSの3.0リッター直列4気筒エンジンと6速MTを搭載しました。
1992年
968の納車が開始されました。305Nmを発生する当時最強の4気筒エンジンを搭載し、ポルシェ初のティプトロニックAT採用モデルとなりました。
1993年
軽量高性能仕様の968クラブスポーツが発売され、1,538台が生産されました。また、968ターボRSはわずか4台、968ターボSは14台のみが製造されました。
1994年
968は『ビバリーヒルズ・コップ3』や『スペシャリスト』などのハリウッド映画に登場しました。
1995年
968の生産が終了しました。累計生産台数は11,248台で、ポルシェ史上最も希少な量産モデルの一つとなりました。これをもって、20年にわたるポルシェのトランスアクスル時代は幕を閉じました。
このトランスアクスルシリーズは、単なる「911とは異なるポルシェ」ではありませんでした。前後重量配分の最適化、水冷エンジンの採用、新技術への挑戦、そして新たな顧客層の開拓を通じて、ポルシェの未来を支えた重要な存在だったのです。944の成功、968の希少性、928の革新性、924の先進性――それぞれが、ポルシェの歴史に欠かせない1ページとして今も輝き続けています。















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