BMW M、新世代燃焼技術「Mイグナイト」を量産化 M3/M4/M2に導入へ

・レーシング由来プレチャンバー燃焼の量産化
・高負荷時燃費を大幅改善する革新技術
・ユーロ7対応を見据えた高性能進化
BMW Mは2026年5月7日、新開発エンジン技術「BMW M イグナイト テクノロジー」を発表しました。2024年に特許取得したこの技術は、直列6気筒ガソリンエンジン向けに開発された新世代プレチャンバー燃焼システムで、2026年7月から生産開始となる「BMW M3」「BMW M4」に初採用されます。さらに「BMW M2」にも2026年8月から導入される予定です。
BMW M イグナイト テクノロジー最大の特徴は、高回転・高負荷領域での燃焼効率を飛躍的に高める点にあります。特にサーキット走行やトラックデイのような高負荷環境において燃料消費を大幅に低減できるとしており、同じ燃料量でより長時間のスポーツドライビングを楽しめるようになります。BMW Mは、この技術をモータースポーツから量産車へ転用した最新技術の代表例と位置付けています。
システムの中核となるのは、シリンダーヘッド内に新設されたプレチャンバーです。このプレチャンバーはオーバーフロー開口部によってメイン燃焼室と接続されており、専用スパークプラグと専用イグニッションコイルを装備しています。そのため、エンジン全体では2系統の点火システムを備える構造となっています。
通常走行時の低回転・中負荷域では、従来通りメイン燃焼室側のスパークプラグが主体となって点火を行います。しかし、高回転・高負荷状態になるとプレチャンバー側点火システムが主役となります。燃料と空気の混合気の一部がプレチャンバーへ送り込まれ、そこで着火。発生した燃焼炎は音速に近い速度でメイン燃焼室へ噴出されます。
この“点火ジェット”によって、ピストン上部の燃焼室では複数箇所で同時燃焼が発生。結果として燃焼速度が大幅に向上し、より効率的で力強い燃焼を実現します。また、異常燃焼であるノッキングの抑制効果も高く、高負荷時でも安定した出力特性を確保できる点が大きなメリットです。
さらにBMW Mによると、この技術は排気ガス温度低下にも貢献します。これにより排出ガス浄化性能も向上し、2026年11月施行予定の厳格な欧州排出ガス規制「ユーロ7」への適合を実現しています。高性能スポーツモデルでありながら、将来的な欧州登録要件へ対応する点も重要なポイントです。
BMW M イグナイト テクノロジーでは、プレチャンバー燃焼に加え、高圧縮比化や可変タービンジオメトリー付きターボチャージャーも採用されています。これらを組み合わせることで、直列6気筒エンジン全体の効率を大幅に引き上げています。
一方で、BMW M3、BMW M4、BMW M2の排気量や最高出力は従来型から変更されません。BMW Mは単純な最高出力競争ではなく、燃費性能や環境性能、持続可能性を高次元で両立させる方向へ進化を進めています。
レーシングカー由来の最先端燃焼技術を市販車へ投入しながら、環境規制対応と高性能を両立するBMW M。内燃機関の未来を切り拓く新技術として、「BMW M イグナイト テクノロジー」は大きな注目を集めそうです。
【ひとこと解説】
プレチャンバー(予燃焼室)は、主燃焼室とは別に設けられた小さな燃焼室で、点火効率と燃焼速度を高めるための装置です。点火プラグはこの小部屋に配置され、まずプレチャンバー内で濃い混合気を燃焼させます。すると複数の小さな火炎ジェットがノズルを通じて主燃焼室へ噴き出し、希薄な混合気でも強力かつ均一に着火させることができます。これによりノッキング耐性の向上、熱効率の改善、燃費向上、排出ガス低減が可能になります。近年はF1や高効率ガソリンエンジン、さらには水素エンジンでも採用が進み、次世代内燃機関の重要技術として注目されています
















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