ロールス・ロイス、「ファントム」100周年記念。史上最も精緻なウッドワークと革新的クラフトを公開

  • ファントム生誕100周年を祝うプライベートコレクションに特別仕様を採用
  • 世界初の3技法「3Dマーケトリー」「3Dインクレイヤリング」「金箔加工」を導入
  • 1年を費やして開発された史上最も複雑なドアパネル、走る芸術作品へ

ロールス・ロイス・モーター・カーズは、フラッグシップモデル「ファントム」の100周年を記念して、これまでにない革新的なウッドワークを発表しました。ブランドの頂点に立つファントムは、1925年の誕生以来、ラグジュアリーの象徴として世界を魅了してきました。その記念すべき節目を祝うプライベートコレクションでは、職人たちが新たな境地に挑戦し、伝統的な木工技術に加えてブランド初となる3つの技法を導入。「3Dマーケトリー」「3Dインクレイヤリング」、そして「金箔加工(ゴールドリーフィング)」が、それぞれの面でファントムの歴史を物語る芸術作品を生み出しました。

今回特別に開発されたインテリアの中でも、とりわけ注目を集めるのがドアパネルです。これはロールス・ロイス史上もっとも複雑で精緻な木工細工であり、完成に至るまで実に1年を費やしました。テーマは「ファントムが歩んだ100年の旅」。地図や道、雄大な風景、花や木々、そして歴代の実験的モデルが一枚の木材に刻まれ、ファントムの伝説を視覚的に表現しています。各パネルはブラックウッドの特注ベニアを採用し、木目の表情が光を受ける角度によって変化するよう配置。まるで彫刻のように仕上げられたそのドアは、移動空間に歴史と詩情を吹き込みます。

細部には高度なレーザー技術も活用され、3段階の深さで線や模様を刻印。彫りの浅い部分は明るく反射し、深い部分は陰影を生み出すことで、モチーフに立体感と奥行きを与えています。その結果、静止した木材でありながら、地図の道筋や花々が動き出すような錯覚をもたらし、眺めるたびに新しい発見が得られる仕立てとなっています。

さらに、表面に模様を重ねて描き出す「3Dインクレイヤリング」技法も新たに開発されました。職人たちは木材の上にインクを層状に積み重ねることで、従来では不可能だった極めて精緻な装飾を実現。グラデーションや質感の変化を繊細に表現することで、ファントムの歴史を物語る象徴的なディテールを浮かび上がらせています。

「3Dマーケトリー」では、平面の表面に象嵌を立体的に組み合わせ、装飾を浮き上がらせる試みが行われました。浮き彫りのように盛り上がったモチーフにはさらにインクや彫刻が施され、視覚的な奥行きに加え、指で触れて楽しめる触感的な魅力も追加されています。乗員は、ただ眺めるだけでなく、指先でファントムの歴史を感じることができるのです。

そして極めつけは「金箔加工」。木材工芸の伝統技法を現代の自動車製造に適用したこの試みでは、厚さわずか0.1ミクロンの24カラット金箔を、ファントムの旅路を象徴する「道」として埋め込みました。金箔は一枚一枚手作業で貼られ、その上から保護層を施すことで、耐久性と高い光沢を確保。道のラインが光を受けて輝くさまは、100年の歴史を黄金の糸で紡いだような表現です。

この新たなウッドワークを可能にするため、インテリア・サーフェス・センターの職人5名が英国ウェスト・ディーン・カレッジで特別研修を受講し、伝統と革新の融合に挑みました。結果として生まれたのは、ただの装飾を超えた「動く芸術作品」。デザイン、工学、クラフトマンシップが高次元で融合し、ファントム100周年にふさわしい誇り高い仕上がりとなっています。

ロールス・ロイスのビスポーク・コレクティブが生み出したこの作品は、素材の限界を超えた挑戦の結晶であり、クラフツマンシップの未来を切り開くものです。ファントム100周年記念コレクションに採用されるこれらの技法は、ブランドが築き上げてきた伝統に新たな章を刻み、ラグジュアリーカーの概念を再定義する象徴となるでしょう。

【ひとこと解説】
ロールス・ロイス「ファントム(Phantom)」という名前は、英語で「幻影」や「幽霊」を意味します。1925年に初代モデルが発表された際、その圧倒的に静粛で滑らかな走行性能がまるで「幽霊のように存在を感じさせない」と評されたことが由来とされています。特にロールス・ロイスは「世界で最も静かな車」を目指しており、その静粛性と存在感を強調するために「ファントム」という名が選ばれました。以降、ファントムは100年近くにわたりブランドの頂点を象徴するモデルとして受け継がれています。

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