- 135mの「模擬カントリーロード」を備えた光学試験施設を開設、恒常的条件下で最新ヘッドライトを検証可能
- 自動運転ロボットによる耐久テスト「ハイデ・サーキット」で精度と効率を向上
- 総延長86kmの多彩な試験モジュールを集約し、開発スピードと持続可能性を両立
メルセデス・ベンツは2025年10月、バーデン=ヴュルテンベルク州イメンディンゲンにある「グローバル・プルービンググラウンド」で、世界最先端とされる新しい光学試験センターを公開しました。全長135メートル、高さ8メートルの巨大な屋内施設は、模擬カントリーロードを忠実に再現。時間帯や天候に左右されることなくヘッドライトや車両の照明システムを精密に検証できる点が大きな特徴です。アスファルトには経年劣化した道路を模した特注の舗装材を採用し、反射ポストや歩行者ダミーの設置も可能。最大5台の車両を並行走行させ、対向車や前走車をシミュレーションすることもできます。総工費は1,050万ユーロ、建設期間は2年に及びました。

イメンディンゲン施設のもう一つの革新が、自動運転ロボットによる耐久走行試験「ハイデ・サーキット」です。深い穴や石畳を備えた荒れた路面を、ドライビングロボットが24時間体制で走行。人間のテストドライバーに代わり、最大6,000kmの過酷な走行を繰り返すことで、実際の顧客走行30万kmに相当するデータを短期間で収集します。これにより試験の精度と効率が向上し、開発期間の短縮にもつながっています。
さらに、同拠点は徹底したデジタル化を推進。「デジタルツイン」と呼ばれる高精度の仮想再現環境を整備し、施設内の試験路はサブミリ単位でデジタル化。開発車両や荷重条件をバーチャルで走行させ、シャシーやサスペンションの最適化をシミュレーションで数百パターン検証した上で、現実の試作車に反映します。この手法により、実走前に何千km分ものデータを収集でき、効率性・持続可能性の両立を実現しています。

イメンディンゲンの開発環境は10年前に着工し、現在は総面積520ヘクタールにわたり86kmの試験路と30以上のモジュールを備えています。都市型交差点や標高差180mの山岳路、米国や中国、日本の道路標識・路面を再現した区間まで網羅し、最大400台の車両が同時に試験可能。強烈な日差しを再現する「人工の太陽」や豪雨装置も設置され、実際の環境に近い条件でテストを実施できます。
環境保全にも力を入れており、約200頭の羊が敷地の植生管理を担い、さらにラマが外敵から群れを守っています。絶滅危惧種を含む多様な動植物の保護区域も整備され、森林再生や湿地造成など生態系に配慮した取り組みも展開。地元環境団体との協力で補償的な自然保護策も実施しています。
施設には250人の常駐スタッフと、ピーク時には他拠点から2,100人の従業員が加わり、これまでに延べ3万台以上のテスト車両が1億kmを走行。総投資額は開設時の2億ユーロに加え、さらに2億ユーロが拡張に投入されています。
メルセデス・ベンツ開発担当取締役のマルクス・シェーファー氏は「イメンディンゲンはリアルとバーチャルの試験を融合させた初のデジタル化試験場であり、効率性・スピード・持続可能性の全てで自動車開発を新たな次元に引き上げる」と強調しました。
同社の次世代モデルは、この最先端の環境で磨かれ、より短期間で高品質かつ持続可能な形で市場へ投入されることになります。
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