フェラーリ「849 テスタロッサ」発表。1050cvを誇る新世代PHEVベルリネッタ

  • V8ツインターボ+3モーターでシステム総出力1050cv、0-100km/h加速は2.3秒未満
  • 新設計ターボやABS Evo、FIVEシステムを採用し動力性能と制御精度を刷新
  • 1970年代プロトタイプを想起させるデザインと革新的エアロでダウンフォース25kg増

フェラーリは2025年9月、ミラノにて最新のプラグインハイブリッド・スーパースポーツ「849 テスタロッサ」を世界初公開しました。本モデルは、フェラーリの現行レンジにおける頂点に立つベルリネッタとして、SF90ストラダーレの後継に位置付けられます。名称に採用された「テスタロッサ」は、1956年の500 TRや1984年に登場した市販モデルに由来し、真紅に彩られたカムカバーとともにフェラーリの伝説を築いてきた象徴的な名前です。今回の復活は、過去の伝統と未来志向の技術を融合させるという強いメッセージを放っています。

パワートレインは徹底的に刷新されました。3.9リッターV型8気筒ツインターボエンジンは、従来比で50cv向上し、最高出力830cvを発揮。比出力は208cv/lという驚異的な数値を達成しました。完全新設計のターボチャージャー、軽量化されたカムシャフトやチタン製ボルト、新素材を用いたエキゾーストマニホールドなど、随所にレーシングエンジン由来の技術が投入されています。このユニットに3基の電気モーターを組み合わせ、合計220cvをプラス。システムトータルで1050cvという、量産フェラーリ史上最高の出力を誇ります。これにより0-100km/h加速は2.3秒未満、0-200km/hはわずか6.35秒、最高速度は330km/hを超える圧倒的なパフォーマンスを実現しました。

PHEVシステムは、前輪に2基、後輪に1基のモーターを配置することで電子制御4WDとトルクベクタリングを実現。加速時の力強さとコーナリング時の正確な挙動制御が両立され、ドライバーは常に安定したトラクションを得られます。さらにF1からのフィードバックを受けたMGU-Kを搭載し、ブレーキエネルギー回生効率やスムーズな動力切り替えを可能にしました。バッテリー容量は7.45kWhで、eDriveモードでは最大25kmのゼロエミッション走行も可能。高性能と日常的な実用性を併せ持つ点も特徴的です。

車両ダイナミクス面では、新世代の「FIVE(Ferrari Integrated Vehicle Estimator)」を採用。これは車両の速度やヨー角をリアルタイムで推定する“デジタルツイン”技術で、従来の制御を超える精度を実現します。ABS Evoやトラクションコントロール、eディファレンシャルと連携し、ブレーキングや旋回時の安定性を飛躍的に向上。制動距離は100-0km/hで28.5m、200-0km/hで108mという数値を誇り、フェラーリ史上最も進化した電子制御システムを備えています。

軽量化にも徹底して取り組まれました。本来ならば新たなハイブリッド構成によって重量増が避けられないはずですが、エンジン部品やサスペンションの軽量化、カーボン素材の採用などにより、先代SF90ストラダーレと同等の乾燥重量1570kgに抑制。その結果、パワーウエイトレシオは1.5kg/cvという、市販フェラーリ史上最高の数値を記録しました。

デザインはフェラーリ・スタイリングセンターが手掛け、1970年代のスポーツプロトタイプからインスピレーションを得ています。シャープで幾何学的なラインを描きつつ、エアロダイナミクスを徹底的に追求。250km/h走行時に415kgのダウンフォースを発生し、先代比で25kg増加。冷却効率も15%向上しています。特にツインテール構造とアクティブリアスポイラーの組み合わせは、視覚的な迫力と機能を両立させる革新的なソリューションです。フロントフロアには新設計のボルテックスジェネレーターが配され、20%のダウンフォース向上を実現。細部に至るまで徹底的に空気を操る思想が貫かれています。

インテリアはF80から着想を得たセンターセイルモチーフや、ゲート式シフトセレクターを備えた新しいコックピットデザインを採用。ドライバーを包み込むような空間設計としつつ、最新のHMIシステムにより操作性を大幅に向上させています。新しいステアリングホイールには機械式ボタンを備え、伝統と最新機能のバランスを実現。Apple CarPlayやAndroid Auto対応、ワイヤレス充電や専用アプリ「MyFerrari Connect」も用意され、現代の高級車としての快適性やコネクティビティも備えています。

さらに、サーキット志向の「アセット・フィオラノ」仕様も選択可能。カーボンホイールやアルカンターラ製軽量シートを採用し約30kg軽量化。専用の空力デバイスにより標準仕様比で最大3倍のダウンフォースを実現します。サスペンションにはマルチマティック製ダンパーを採用し、ボディコントロールを一層強化。専用カラーリングも選べ、より過激でサーキット指向の一台に仕上げられます。

タイヤはミシュラン、ピレリ、ブリヂストンと共同開発し、サーキット走行向けのCup2Rから日常走行用のランフラット仕様まで幅広い選択肢を用意。ブレーキシステムも刷新され、前後ディスクの大型化と新冷却ダクトにより、耐熱性と制動安定性を強化しています。

また、ADAS(先進運転支援システム)も充実。アダプティブクルーズコントロール、緊急ブレーキ(自転車検知対応)、レーンキーピングアシスト、ブラインドスポット警告などを備え、フェラーリらしいドライビング体験を損なうことなく安全性を高めています。

オーナーサービスも拡充し、新車には7年間の無償メンテナンスが付帯。さらにハイブリッド専用の保証延長プログラム「Warranty Extension Hybrid」と「Power Hybrid」が用意され、最大16年間にわたり高電圧バッテリーの無償交換を含むサポートが提供されます。

849 テスタロッサは、伝統的なV8ベルリネッタの美学と、PHEVとしての最先端技術を融合させた一台です。1050cvという絶対的な出力、革新的な電子制御、空力性能、そして歴史をオマージュしたデザインによって、フェラーリの新たな頂点を築きました。このモデルは、究極のドライビングプレジャーを求める顧客に向けて設計された、まさに“次世代の伝説”と呼ぶにふさわしい存在です。

【ひとこと解説】
テスタロッサ(Testarossa)」という名前は、イタリア語で「赤い頭」を意味し、フェラーリのレーシングエンジンのカムカバーを鮮やかな赤で塗装していたことに由来します。1956年に登場した500 TRで初めて使われ、以降、フェラーリの象徴的な高性能モデルに冠されてきました。特に1984年に発表された市販モデル「フェラーリ・テスタロッサ」はその名を世界的に有名にし、ブランドの伝統と情熱を象徴する呼称として語り継がれています。

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