BMW新拠点イルルバッハ=シュトラスキルヒェン、「心臓部」エナジーセンター完成。脱化石燃料で次世代電池工場を支える

  • 高電圧バッテリー新工場の中核設備「エナジーセンター」と消防署が14か月で完成
  • 工場全体に電力・冷却・圧縮空気・熱を供給、廃熱を再利用し化石燃料を一切不使用
  • 62,000㎡の屋根にPV設置予定、年間6,000MWh発電し完全再生可能エネルギー運用へ

BMWグループは2025年10月、バイエルン州イルルバッハ=シュトラスキルヒェンに建設中の新高電圧バッテリー工場において、エナジーセンターと消防署の完成を発表しました。総面積約10,400㎡の施設はわずか14か月で竣工し、工場の「心臓部」として電力、冷却、圧縮空気、熱など生産に必要な全てのユーティリティを供給します。

安全面でも大きな進展があり、2025年6月からBMWの消防隊が24時間常駐しています。5台の消防車と26名の隊員が交代制で従事し、地元消防団とも連携しながら訓練を続けています。経験豊富なメンバーと地域から新たに採用された人材が組み合わさり、将来的には正式な工場消防隊として機能する予定です。

エナジーセンターは生産工程で発生する約23℃の冷却水を熱源として利用し、4基のヒートポンプ(各1.8MW)で約60℃の暖房エネルギーに変換します。食堂や倉庫などを効率的に温めることができ、配管は総延長3.8kmに及びます。飲料水の使用は厨房や洗面所に限られ、トイレには雨水を活用。環境負荷を大幅に抑える仕組みが導入されています。

バッテリー生産の高度自動化に欠かせない圧縮空気は6barで供給され、2基の基幹コンプレッサーと1基のピーク対応コンプレッサーによって安定供給が可能です。発生する廃熱は冷却水系統に回収され、再び暖房エネルギーとして利用されます。

工場は化石燃料に依存せず、すべて再生可能エネルギーで稼働します。屋根面積62,000㎡に設置される太陽光発電システムには約14,000枚のモジュールが搭載され、最大出力6MWp、年間6,000MWh以上を発電予定です。外部からの電力も100%再生可能エネルギーで調達されます。電力供給は地下110kVケーブルで行われ、2028年に完成予定の変電所に接続されます。それまでの間は暫定的に34MWの接続で安定供給を確保します。敷地内には68MW級の変圧器を2基設置し、工場全体に必要な電圧へ変換して供給します。

また、通信インフラとしてエナジーセンターの屋上にアンテナが設置され、敷地全体のモバイル通信をカバーします。建物内には220基以上のアンテナと9.5kmの高周波ケーブル、3.5kmの光ファイバーが敷設され、安定した通信環境が整備されています。

建設にはBIM(Building Information Modelling)が全面的に導入され、ドローンを活用して施工状況をデジタルモデルと比較することで、工期短縮と精度向上が実現しました。この結果、計画から運用開始までのプロセスが円滑に進められています。

今回のエナジーセンター完成は、新世代「第6世代」高電圧バッテリーの量産に向けた重要な一歩となります。廃熱や雨水の再利用、再エネ由来の電力供給など持続可能性を徹底的に追求した仕組みにより、化石燃料ゼロで稼働する革新的工場が誕生しました。プロジェクト責任者のサブリナ・クーグラー氏は「新工場にとって重要な節目を迎えた。エナジーセンターはここでの生産を支える“心臓”だ」と強調し、BMWは電動化時代にふさわしい次世代型の生産モデルを世界に示しています。

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