・メルセデス・ベンツ クラシックとヘンリー・プールがハンプトン・コート宮殿で共同実演
・F1マシンW 196 Rや実験車C 111-IIなど希少モデルを披露
・英国王室御用達の称号を授与されたメルセデス・ベンツUKの存在感
2025年9月、ロンドン郊外のハンプトン・コート宮殿で開催された「Concours of Elegance」にて、メルセデス・ベンツ クラシックとサヴィル・ロウの名門テーラー、ヘンリー・プール&カンパニーが共演しました。歴史的な宮殿を舞台に、両者は最高水準のクラフツマンシップを披露し、観客を魅了しました。

メルセデス・ベンツ クラシックセンターの職人たちは、300 SL(W 198)のレザーシートを一から再生・張替えする作業を実演。隣ではヘンリー・プールの熟練テーラーがオーダーメイドのジャケットを縫い上げ、両分野に共通する「伝統と完璧への探求」が鮮明に示されました。両者にとって英国王室との縁は深く、メルセデス・ベンツUKは2025年初頭に国王陛下御用達の称号を授与。ヘンリー・プールは200年以上にわたり45ものロイヤルワラントを保持してきました。
会場では歴史的名車も展示されました。1954年にグランプリ復帰を果たしたF1マシン「W 196 R」は、ファンジオが1954年と1955年に世界選手権を制した伝説の車両で、最高速度300km/h、出力213kW(290hp)を誇ります。ストリームラインドボディと独立ホイール型の2仕様が存在し、当時の技術革新を象徴しました。さらに、1970年の実験的スーパースポーツ「C 111-II」も披露。4ローター・ヴァンケルエンジンは257kW(350hp)を発揮し、その革新的デザインと迫力あるサウンドは観客を圧倒しました。市販化されることはなかったものの、ブランドイメージに大きな影響を与えた一台です。
加えて、2014年にルイス・ハミルトンがドライバーズタイトルを獲得し、メルセデスAMGが初のコンストラクターズタイトルを手にした「F1 W05 Hybrid」も登場。現代F1の成功の礎を築いたマシンが、往年の名車と並び展示されました。
クラシックセンターはドイツ・フェルバッハを拠点に、オリジナル資料を活用したレストアや純正部品供給を行い、18,000㎡の拡張工房に約70名のスペシャリストを抱える規模へ成長。伝統を継承しつつ最先端の技術を駆使し、世界中のコレクターや愛好家から高い評価を得ています。
伝統的仕立てと自動車レストアの技術が融合した今回のイベントは、王室の庭にふさわしい「至高のクラフツマンシップ」の競演として、多くの来場者に深い印象を残しました。
【ひとこと解説】
ヘンリー・プール&カンパニーは、ロンドン・サヴィル・ロウを代表する老舗テーラーで、200年以上の歴史を誇ります。創業はナポレオン戦争期に軍服仕立てから始まり、のちに息子ヘンリー・プールが英国仕立ての中心地を築いたとされています。これまでに45ものロイヤルワラントを獲得し、国王エドワード7世やウィンストン・チャーチル、チャールズ・ディケンズら名士を顧客に持ちました。伝統的な技法を継承しながら、完全オーダーメイドのスーツを今も手作業で仕立て続けています。日本では白洲次郎が愛用したことでも知られています。
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