世界初のバイク「ダイムラー・ライディングカリッジ」誕生140周年。0.5馬力の“祖父の時計”エンジンで時速12km、8月31日にメルセデス・ベンツ博物館で走行披露

140年前の1885年8月29日、ゴットリープ・ダイムラーは「ライディングカリッジ」の特許を申請しました。高回転型単気筒エンジンを搭載したこの二輪車は、世界初のオートバイとされ、自動車誕生へとつながる大きな一歩でした。1886年には自動車への技術移転が実現し、個人のモビリティの時代が幕を開けます。

このライディングカリッジは、ダイムラーとヴィルヘルム・マイバッハが約2年をかけて開発した通称“祖父の時計(グロースファーターウール)”と呼ばれるエンジンを搭載。出力は0.37kW(0.5馬力)、回転数は600rpmで、最高速度は約12km/hに達しました。点火方式には独自のグローチューブ点火を採用し、小型真鍮タンクから燃料を供給して火を灯します。この画期的な高回転エンジンは、1886年には自動車、さらに翌年には鉄道車両、1888年には飛行船にも転用され、陸・海・空でのモータリゼーションの礎となりました。

車体は木製フレームと木製車輪を備え、頑丈な鉄製タイヤを装着。動力伝達は蒸気機関にも用いられた革ベルトを使用し、2種類の固定ギア比を選択可能です。減速機構には当時の先端技術であったピニオンとリングギアを採用。直線ハンドルは同時代に登場した“セーフティバイク”から着想を得たとされています。走行安定のため補助輪も備え、俊敏性には欠けますが、内燃機関を搭載した道路用車両としての可能性を示しました。

1885年11月10日には、ダイムラーの息子アドルフがカンシュタットからウンターテュルクハイムまで往復約3kmを走行し、その実用性を実証しました。しかし、オリジナルは1903年の火災で失われ、現在は忠実に再現されたレプリカがメルセデス・ベンツ博物館に展示されています。

この貴重なレプリカは、2025年8月31日に同博物館のイベント「Classics & Coffee」で実際に走行披露されます。レジェンドルーム1「自動車の発明」には常設展示もあり、来館者は140年前の革新を間近に体感できます。ライディングカリッジは、まさにモータリゼーションの原点を物語る存在です。

【ひとこと解説】
ゴットリープ・ダイムラー(1834–1900)は、ドイツの技術者で内燃機関と自動車の発展に大きな功績を残した人物です。盟友ヴィルヘルム・マイバッハとともに高回転型の小型ガソリンエンジンを開発し、1885年に世界初のオートバイ「ライディングカリッジ」を完成させました。翌1886年には自動車にもそのエンジンを搭載し、陸・海・空へ応用を広げました。ダイムラーは現代のモビリティの礎を築いた先駆者として、自動車史に名を刻んでいます。

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