- F1チーム初、eActros 600による完全電動輸送を実現
- ブラクリ―からザントフォールトまで673kmを走破、充電は20%→80%を25分で完了
- HVO100バイオ燃料活用に続き、持続可能な輸送戦略を加速
メルセデスAMGペトロナスF1チームは2025年オランダGPに向けて、W16マシンを電動トラック「メルセデス・ベンツ eActros 600」で輸送しました。F1チームとしては初の試みであり、7月のイギリスGPでのパイロット運用を経て本格導入が実現しました。輸送距離はイギリス・ブラクリ―からオランダ・ザントフォールトまでの673km。電動トラックによる長距離輸送という新たな挑戦が、持続可能なレース運営の象徴となりました
eActros 600は600kWhのリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを搭載し、1回の充電で500km以上の走行が可能です。さらにメガワット充電システム(MCS)に対応し、20%から80%までをわずか25分で充電できる性能を誇ります。これにより、従来のディーゼルトラックに比べてライフサイクル全体で最大80%のCO₂e削減を実現可能であり、チームのネットゼロ目標(2030年)に向けた重要な一歩となります。
今回の電動輸送は、チームが推進する「持続可能な輸送戦略」の一環です。2022年にはHVO100バイオ燃料をいち早く導入し、2024年の欧州シーズンでは輸送車両や発電機の98%をカバー。年間で500t以上のCO₂e削減に成功しました。eActros 600の導入は、この取り組みをさらに進化させるものです。
チームのサステナビリティ責任者アリス・アシュピテル氏は「我々はレースの方法だけでなく、移動の仕方も見直す必要がある。今回のeActros 600の導入は脱炭素化への重要なステップだ」とコメント。ダイムラー・トラックUKのアシュ・アームストロング氏も「長距離輸送における電動化の到来を示す証拠であり、レンジ不安はもはや過去のものだ」と強調しました。
今後チームは、欧州シーズン全体で電動フリートを拡充する方針です。F1を「世界最速の実験室」と位置づけ、レースだけでなく輸送やロジスティクスにおいても技術革新を推進していきます。これにより、モータースポーツの舞台からサステナブルな未来に向けた実用的な解決策が広がっていくことが期待されます。
【ひとこと解説】
メルセデスAMGペトロナスF1チームのW16は、2025年シーズンを戦う最新F1マシンです。FIA規定に基づく1.6リッターV6ターボハイブリッドエンジンを搭載し、ERS(エネルギー回生システム)と組み合わせて1000馬力級の出力を発揮します。空力は最新のグラウンドエフェクトを活用し、高速コーナーでの安定性と効率を両立。軽量カーボンモノコックと洗練された冷却構造により、信頼性とパフォーマンスを高次元で融合しています。チームのサステナビリティ戦略に沿って、輸送や運用面でも環境負荷低減を意識した次世代マシンです。
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