メルセデス・ベンツ、「Next Level Production」で史上最大のプロダクト攻勢に備える

  • 今後3年間で40以上の新型車を投入、ブレーメンやケチケメート工場でMB.EAアーキテクチャ量産を開始
  • 欧州工場に20億ユーロ超を投資、デジタル化・AI・自動化により生産効率を10%改善
  • 2039年までに全生産拠点で再生可能エネルギー100%を目指す持続可能な体制へ

メルセデス・ベンツは、「Next Level Production(ネクストレベル・プロダクション)」を掲げ、ブランド史上最大規模となる新車攻勢に備える体制を整えました。今後3年間で40車種以上を投入予定で、その基盤となるのが最新の電動車向けアーキテクチャ「MB.EA」です。2026年第1四半期にブレーメン工場で新型GLC(EV版)の生産を開始し、第2四半期にはケチケメート工場でEQテクノロジー搭載のCクラスを生産予定です。GLCはEVのほか、ガソリン・ハイブリッド仕様とも同一ラインで柔軟に生産できる設計となっており、中国市場向けロングホイールベース仕様は後に北京工場で組み立てられます。

同社は欧州工場に20億ユーロ超を投資し、MB.EA導入に向けた大規模な改修を実施。デジタルツインによる工程シミュレーションを用いることで、生産ラインを止めることなく迅速かつ効率的に改装を進めました。さらに、MO360エコシステムにおけるAI活用により、内燃機関・ハイブリッド・EVを同一ラインで効率的に生産する体制を構築。2024~2027年の間に生産コストを10%削減する計画で、その鍵となるのが自動化とデジタル化、AIによる最適化です。また、低コスト地域の生産比率を現行15%から2027年までに30%へ引き上げる方針も示しました。

新製品攻勢は欧州各工場を起点に展開されます。ラシュタット工場ではすでにMMAアーキテクチャ採用の電動CLAが立ち上がっており、続いてブレーメンとケチケメートでGLCとCクラスが量産されます。さらにジンデルフィンゲン工場では新型メルセデスAMG電動モデルの準備が進行中で、すでに試験段階に入っています。ブレーメンとジンデルフィンゲンは引き続きコアおよびトップエンドセグメントのリード工場となり、ドイツ国内の製造拠点の重要性を改めて示しています。

また、サプライチェーンのレジリエンス強化も重要課題です。MO360データプラットフォームやクラウドベースのMB.OSと統合することで、生産工程は標準化・スケーラブルかつ柔軟に対応可能となり、地政学的リスクにも迅速に対応できる体制を実現。加えて、米アプトロニック社と協力し、物流分野を中心にヒューマノイドロボットの導入も計画されています。

持続可能性においても「Next Level Production」は中核を担います。2022年から全自社生産拠点でカーボンニュートラルを達成しており、2030年までに再生可能エネルギーで生産エネルギー需要の70%以上を賄う計画です。ドイツ北部パーペンブルクでの陸上風力発電所、バルト海での洋上風力発電所の建設も進んでおり、承認を取得済み。最終的には2039年までに全世界の工場で再生可能エネルギー100%を実現する目標を掲げています。

同社のコアおよびトップエンドセグメントは今後の製品攻勢の中核を成し、40以上の新型車を世界規模で投入予定です。「Next Level Production」を通じてメルセデス・ベンツは、生産の柔軟性・効率性・持続可能性を大幅に高め、市場環境と顧客の要望に応じて迅速に対応できる体制を構築。まさに次世代へと向けた製造戦略の礎を築いたといえます。

【ひとこと解説】
MO360とは、メルセデス・ベンツが導入しているグローバル生産管理のデジタルエコシステムです。クラウド基盤を活用し、世界各地の工場をリアルタイムでつなぎ、生産状況や品質、物流を一元的に可視化・最適化します。AIやデジタルツインを組み合わせることで、車両の組立工程をシミュレーションし、効率向上や不具合予防に役立てています。これにより、内燃機関・ハイブリッド・EVといった異なるパワートレインを同一ラインで柔軟に生産できる体制を支えています。

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