ポルシェ、EV向け「ワイヤレス充電」を発表。11kW非接触充電と最大400kW急速充電対応の新型カイエンEV

  • 世界初、11kW対応「ワンボックス」型ワイヤレス充電システムを2026年欧州導入
  • 新型カイエンEVに搭載、家庭充電の利便性を大幅に向上
  • DC最大400kWの超急速充電にも対応し、長距離走行も安心

ポルシェは、電動化の次なるステップとして「Porsche Wireless Charging」を発表しました。スマートフォンや電動歯ブラシで一般化している非接触充電を自動車に導入する取り組みで、家庭でのEV充電を劇的に簡単にする技術です。本システムは最大11kWの出力を誇り、従来の有線AC充電と同等の性能を実現しています。特徴的なのは「ワンボックス」構造と呼ばれる仕組みで、駐車場に床下プレートを設置するだけで充電が可能になることです。これまで必要だったウォールボックスや外付けの制御ユニットは不要で、ユーザーは駐車するだけで自動的に充電が開始されます。

この技術を初めて搭載するのは、2025年末に発表予定の新型カイエンEV(開発コードE4)です。車両側には専用の受電ユニットがフロントアクスル間に組み込まれており、駐車位置を床下プレートに合わせると車高が自動で下がり、数センチの距離を介して非接触でエネルギーが転送されます。充電効率は最大90%と高く、ユーザーはケーブルの抜き差しから解放されます。さらに床下プレートにはモーションセンサーや異物検知機能が搭載されており、人や金属片が間に入り込むと充電が即座に停止する仕組みです。安全性と利便性の両立はポルシェが重視するポイントであり、日常使いに適した完成度が追求されています。

床下プレートのサイズは117×78×6センチで重量は約50キログラム。屋内のガレージはもちろん、屋外駐車場やカーポートにも設置可能です。全ての部品は雨や雪から保護されており、車両が誤って上を走行しても大きな損傷はありません。さらにLTEとWi-Fiモジュールを標準装備し、将来的なソフトウェアアップデートや遠隔診断にも対応。充電状況は「My Porsche」アプリから確認でき、複数車両の認証管理も可能です。また、駐車支援機能「サラウンドビュー」に特別な表示が追加され、車両を最適な位置に誘導することができます。駐車ブレーキをかけた瞬間に充電が始まり、ユーザーが追加操作を行う必要はありません。従来のAC充電同様にタイマー充電やプレコンディショニング機能も利用でき、利便性が一段と高まりました。

ポルシェの調査によると、電気自動車の充電の約75%は自宅で行われています。そのため、このワイヤレス充電システムの潜在的な需要は大きいとされています。販売は2026年に欧州市場から開始され、その後世界各地に展開される予定です。ユーザーはポルシェ・インスタレーション・サービスを通じて設置を依頼でき、専門の電気工事士が自宅や駐車場に床下プレートを設置して稼働確認まで行う仕組みも整っています。利便性、日常性、そして充電インフラの簡素化が、EV普及に向けた大きな推進力になると期待されています。

IAAモビリティ2025では、この新型カイエンEVの試作車が初公開されます。注目を集めるのは、通電すると光を放つ特別な蛍光塗装です。25層以上の特殊コーティングと15層以上のクリア塗装を組み合わせ、合計100リットルのクリア塗料と30回以上の研磨工程、500メートル超の配線を用いて仕上げられています。電流が流れるとブルーからバイオレットに変化する動的なカモフラージュパターンが浮かび上がり、ショーモデルならではの迫力を演出します。

ポルシェは、利便性を高めた家庭用ワイヤレス充電と、世界最高水準の急速充電性能を両立させることで、EVユーザーのライフスタイルを大きく変えようとしています。日常の手軽さと長距離移動の安心感を備えた新型カイエンEVは、同社の電動化戦略における重要なマイルストーンとなる一台です。

【ひとこと解説】
新型カイエンEVの試作車に採用された特別な蛍光塗装は、電気を流すことで発光する「エレクトロルミネセント塗装」の一種です。塗膜は25層以上の極薄レイヤーで構成されており、導電性プライマー、電極層、絶縁層、そして発光を担うエレクトロルミネセント材(蛍光顔料を含む層)などが順に重ねられています。ここに交流電圧を印加すると、発光層内の蛍光顔料が励起され光を放つ仕組みです。その上に15層以上のクリアコートを重ね、耐候性と耐久性を確保しています。仕上げには100リットル以上のクリア塗料と500m超の配線が使用され、光の制御によりブルーからバイオレットまでの複数色を切り替えることが可能です。従来の塗装と異なり、電気的要素と化学的発光材料を組み合わせることで「塗装そのものを光源化」する革新的な技術といえます。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次