ポルシェ、厳しい市場環境でも堅調なキャッシュフローを確保!戦略転換で未来への地固めを

- 2025年第3四半期末時点で自動車部門キャッシュフロー13億4,000万ユーロへ増加
- 戦略再編に伴い特別費用27億ユーロ、営業利益は4,000万ユーロに減少
- 電動化比率は世界で35%、欧州では56%に上昇
ポルシェAGは2025年第3四半期をもって、製品戦略の再編を本格的に推進しました。この取り組みは長期的な収益性強化を目的とするもので、短期的には財務指標に大きな影響を与えています。それでもなお、自動車部門のネットキャッシュフローは前年の12億4,000万ユーロから13億4,000万ユーロへ増加し、堅調な事業運営を維持しました。
2025年1〜9月期のグループ売上高は268億6,000万ユーロ(前年比−6%)、営業利益は4,000万ユーロ(前年同期は40億ユーロ)に減少。営業利益率は0.2%と大きく低下しました。これは主に、製品ポートフォリオの柔軟化やバッテリー関連事業などに伴う約27億ユーロの特別費用、ならびに米国の輸入関税(8月以降15%適用)によるコスト増などが要因です。
販売面では、世界で212,509台を顧客に納車し、前年同期比6%減。中でも「マカン」は64,783台と18%増を記録し、アメリカや新興市場では過去最高の販売台数を達成しました。北米地域は前年より5%増加しています。
電動化の進展も著しく、全世界の納車に占める電動モデル比率は35.2%に上昇。うち23.1%がBEV(純電動車)、12.1%がPHEV(プラグインハイブリッド)で、欧州市場では56%に達しました。
CFOのヨッヘン・ブレックナー博士は、「短期的には数字が落ち込むものの、これは長期的な利益体質強化のための投資期」と強調。「2025年が底であり、2026年以降に改善が始まる」と展望を語りました。
今後の製品戦略では、従来の電動化計画を見直し、内燃機関およびプラグインハイブリッド搭載車の追加を予定。完全電動モデルの一部は投入時期を後ろ倒しし、2030年代に向けた次世代EVプラットフォーム開発をフォルクスワーゲングループと協調して再設計します。一方で、現行の電動モデル群は継続的にアップデートされます。
また、経営と労働側が協議する「フューチャーパッケージ」では、コスト構造の最適化や長期的な効率改善を目指しています。ブレックナー氏は「市場環境の好転を当面見込めないからこそ、全領域で大規模な改革が必要だ」とコメントしました。
2025年通期では売上高を370〜380億ユーロ、営業利益率を最大2%、キャッシュフローマージンを3〜5%と予想。戦略再編と米国関税関連で計約31億ユーロの費用を見込んでいます。
ポルシェは短期的な痛みを受け入れつつ、2026年以降の再成長とブランド価値のさらなる向上を見据え、持続可能な高収益体制への移行を加速しています。
【ひとこと解説】
「フューチャーパッケージ(Future Package)」は、ポルシェが2025年に導入を進めている経営改革プログラムです。経営陣と従業員代表の協議により策定され、インフレや世界的な需要変動など厳しい市場環境下での長期的な収益性と効率性の確保を目的としています。生産体制や投資分野の見直し、コスト削減、業務効率化など、全社的な構造改革を進める方針で、将来的な競争力強化と持続的成長の基盤づくりを狙っています。
















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