カイエン復刻の頂点を競う。ポルシェ・クラシック・リストレーション・コンペティション2025、トロントで開催

  • カナダ全土から17チームが初代カイエンを題材に復刻・カスタマイズを披露
  • ナショナルチャンピオンはガルフレーシング風に仕立てた2008年型カイエンターボを製作したポルシェセンター・バンクーバー
  • 人気投票や文化的アートとの融合など、多様な取り組みでブランド遺産を祝福

ポルシェ・カーズ・カナダは2025年9月17日、「ポルシェ・クラシック・リストレーション・コンペティション2025」の結果を発表しました。全国のポルシェセンターが参加する本イベントは、クラシックモデルの復刻を通じて技術力や創造力を競うもので、2019年から続く恒例行事としてファンやオーナーの注目を集めています。今回の第4回大会では、ブランド初のSUVとして2002年に登場した初代カイエンを題材に、各チームが独自の解釈で復刻・再生を行い、その成果を披露しました。

ナショナルチャンピオンに輝いたのは、ポルシェセンター・バンクーバーによる2008年型カイエンターボ。顧客と共同で仕上げたこの一台は、ガルフレーシングを彷彿とさせるカラーリングと、ブリティッシュコロンビア州の地図を大胆に組み合わせた外装デザインが大きな特徴です。内装は高級感あふれるコヒーバレザーを基調に、黒・白・オレンジのペピタ柄ファブリックをアクセントとして採用。ルーフライニングにはポルシェクレストを刻印したレーザーテックス素材を用いるなど、ディテールに徹底してこだわりました。さらに約1,000時間をかけた作業では、メカニカルの刷新やサスペンション強化を実施。オーバーランディング用のルーフラックやウィンチ、補助ライトを装備するなど、機能面でも新たな命を吹き込んでいます。

東部最優秀賞「Best in East」を受賞したのは、ポルシェセンター・ローゾンの2008年型カイエンS。こちらは3インチのサスペンションリフトアップに加え、オフロード対応タイヤやルーフマウントギアを搭載し、遠隔操作可能な照明システムも組み込まれています。力強い走破性能とデザイン性を両立し、冒険心をかき立てる仕上がりで評価されました。

一方、西部最優秀賞「Best in West」にはポルシェセンター・ビクトリアの作品が選ばれました。2008年型カイエンターボをベースに、カナダ西海岸の文化を表現したもので、先住民族コースト・セイリッシュのアーティスト、ルーク・マストン氏と協働。家族と共に群れで旅をするシャチや、ボンネットに描かれたカラスと太陽など、自然や伝承をモチーフとしたアートが外装や内装に施されています。ルーフラックには特注のカヌーを積載し、地域文化とモータースポーツ精神の融合を体現しました。さらに最新のPorsche Classic Communication Management Plusシステムを搭載し、利便性も確保しています。

マーケティング賞を受賞したのは、ポルシェセンター・ケベックの2004年型カイエンターボ。大型タイヤ、ルーフラック、ラリーライトを備え、走破性と美観を兼備したエクスペディション仕様に仕立てられました。このプロジェクトは単なるレストアにとどまらず、映像作品「Au-delà des routes(道を超えて)」と共に展開。カナダの雄大な自然を走るカイエンの姿を通じて、ブランドの冒険精神を広く伝えています。

さらに一般人気投票と来場者投票で二冠を獲得したのが、ポルシェセンター・マーカムの2009年型カイエン。インスピレーション源はポルシェの軍用車「ヤークトワーゲン」で、狩猟をテーマとした実用的な仕上がりです。強化ホイールとタイヤ、ビルシュタイン製サスペンション、アンダーボディスキッドプレート、パワフルなウィンチ、特製の収納コンパートメントを備え、長距離遠征を想定した堅牢な仕様に仕上がっています。

今回の表彰式は、2025年6月に一般公開された「ポルシェ・エクスペリエンスセンター・トロント(PECトロント)」で行われました。同施設は北米で3番目、世界で10番目の拠点で、ブランドの世界観と最新技術を体験できる場です。敷地内には2キロのハンドリングコースや低摩擦路面のドリフトサークルなど4つのドライビングモジュールがあり、プロインストラクター指導のもと、ポルシェ車の性能を体感できます。

また、館内にはビジター向けテラスやライフスタイルショップ、カフェが設けられ、シミュレーターで世界中のサーキットを走る体験も可能です。カスタマイズを検討する顧客向けのフィッティングラウンジも備え、夢のポルシェ像を具現化する機会が用意されています。

クラシックモデルの復刻とカスタマイズを通じてブランドの歴史を再発見し、次世代のファンや技術者を育成するこのコンペティション。2025年大会は、初代カイエンという現代ポルシェの転換点を象徴するモデルを題材に、多様な創意と情熱を改めて世に示す機会となりました。

【ひとこと解説】
カイエン(Cayenne)」の車名は、フランス領ギアナの都市「カイエン」やスパイスとして知られる「カイエンペッパー」に由来するとされています。情熱的で刺激的なイメージを持ち、SUVとしての力強さやスポーツ性能を象徴する名称として選ばれました。ポルシェはモデル名に地名や自然を由来とする例が多く、カイエンもその伝統を踏襲しつつ、新しい市場に挑む姿勢を表現しています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次