革新の系譜を紡いだ「シボレー エアロヴェット」とGMのロータリー挑戦

  • 1970年代初頭、GMはロータリーエンジン搭載コルベットを開発
  • 1976年にV8を積んだ「エアロヴェット」へと進化
  • その革新的デザインとミッドエンジン構想は現代コルベットに継承

1976年に登場したシボレー「エアロヴェット」は、流麗なフォルムとミッドエンジンレイアウトを備えた革新的なコンセプトカーです。その背景には、GMが1960年代末から進めていたロータリーエンジンの研究開発がありました。シボレーは「Chevrolet Experimental Research Vehicle」プログラムで、ヴァンケル式ロータリーを搭載した「XP-882」や「XP-987GT」を発表。4ローター・コルベットでは総排気量9.5L(585cu.in.)に達し、3速ターボ・ハイドラマチックを介したスムーズな加速を実現していました。

車体は軽量なグラスファイバー製で、大型ガルウィングドアや調整式ペダル、可動ステアリングと連動したデジタル計器類を備えるなど、当時としては極めて先進的でした。しかし排出ガス規制の影響でロータリープロジェクトは1974年に中止。ビル・ミッチェル主導のもと、エンジンを6.6L V8へと換装し、空力性能を磨いた「エアロヴェット」として再生されました。

「エアロヴェット」は市販化されなかったものの、そのデザインや技術思想は後のコルベットに大きな影響を与え、第8世代コルベットのミッドエンジン化へとつながる道筋を築きました。現在、この貴重なプロトタイプはGMヘリテージ・コレクションに保存されており、アメリカンスポーツカーの革新を象徴する一台として歴史に名を刻んでいます。

【ひとこと解説】
ヴァンケル式ロータリーエンジンは、ドイツの技術者フェリックス・ヴァンケルが考案した内燃機関で、従来のピストン往復運動ではなく、三角形のローターが楕円形のハウジング内を回転しながら吸気・圧縮・燃焼・排気を行います。構造がシンプルで可動部品が少ないため、軽量・コンパクトで高回転域までスムーズに動作できる点が特長です。マツダが自動車に実用化し有名になりましたが、燃費や排出ガス規制対応の難しさから普及は限定的でした。

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