なぜチーム・シボレーはNASCARで勝ち続けるのか。5年連続王座の裏側

・シボレーがNASCARカップ・シリーズで5年連続マニュファクチャラーズタイトルを獲得
・GMモータースポーツによる“チーム間連携型シミュレーション戦略”が勝利を支える
・若手育成と長期的な技術投資で未来のチャンピオンを発掘
2025年のNASCARシーズン最終戦フェニックス・レースウェイ。チェッカーフラッグが振られると同時に、カイル・ラーソン(No.5 シボレー)がドライバーズチャンピオンを獲得し、シボレーは5年連続となるカップ・シリーズのマニュファクチャラーズチャンピオンを手にしました。さらに、ジェシー・ラブ(No.2 シボレー)がXfinityシリーズのドライバーズタイトルを制し、シボレーは9年連続で同シリーズのマニュファクチャラーズタイトルも獲得。まさに“チーム・シボレー黄金時代”の幕が続いています。

この成功の裏には、GMモータースポーツ(GM Motorsports)による戦略的な体制構築があります。グローバル・モータースポーツ競技部門副社長のエリック・ウォーレン氏は、「私たちの強さは“競合しながら協力する”という構造にある」と語ります。ヘンドリック・モータースポーツ、リチャード・チルドレス・レーシング、トラックハウスといった各チームが、シボレー全体の勝利のために技術・データを共有し、重複投資を避けながら開発を進めているのです。
特に強みとなっているのがシミュレーション技術の共有です。2020年のGMモータースポーツ設立以来、テレメトリー解析や空力シミュレーション環境を全チームで活用できるようになり、開発効率が飛躍的に向上。「ときにチーム間調整は幼稚園の運動会のように大変だが(笑)、一度勢いがつくと誰もがそこに参加したくなる」とウォーレン氏は冗談交じりに語ります。
また、シボレーは若手ドライバーの育成プログラムにも注力。トラックシリーズからXfinity、さらにはカップシリーズまで、段階的に成長できるシステムを整備しています。GMモータースポーツは世界中のレースカテゴリーで才能を発掘し、早い段階でシミュレーションや実走行に触れさせ、将来のNASCARスターを育てています。ウォーレン氏は「優秀な9歳のカートドライバーを世界中から探すような感覚だ」と表現します。
2025年シーズンの結果は、この「チーム・シボレー」戦略が機能している証です。時には他メーカーが速いパッケージを持ち込むこともありますが、ドライバーの技量、エンジニアの緻密な調整力、そしてチーム全体の連携力が、最後には勝利をもたらします。

2026年に向けて、ウォーレン氏はXfinityとカップでは中長期的な開発計画を継続し、トラックシリーズでは空力開発を強化してタイトル奪還を狙うとしています。
「私たちは長年、宿題を積み重ねてきた。リソースだけでなく、全チームとドライバーがこのアプローチを信じていることが、他には真似できない強さだ」と彼は語ります。
勝利をつなぐのは、速さだけではない。チームを越えた信頼と共有——それこそが、シボレーがNASCARで頂点を走り続ける理由なのです。
【ひとこと解説】
NASCAR(ナスカー/全米自動車競争協会)は、アメリカを代表するモータースポーツ組織で、1948年に設立されました。主に市販車ベースのストックカーによるレースを主催し、最高峰シリーズ「NASCARカップ・シリーズ」をはじめ、Xfinityシリーズ、トラックシリーズなどを運営しています。レースは主にオーバルコースで行われ、最高時速300kmを超える迫力の接近戦が特徴。フォード、シボレー、トヨタなどのメーカーが参戦し、アメリカ文化を象徴する人気スポーツとして高い支持を集めています。












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