CONCEPT AMG GT XX、40,075kmを走破し25の世界記録樹立 。革新的冷却技術とF1直系ソフトウェアで電動パフォーマンスを刷新

  • 40,075kmを7日13時間24分07秒で走破し、25の長距離記録を更新
  • 中央冷却ハブ(CCH)やCd値0.19の空力性能で常時フルパワーを実現
  • ARレーシングヘルメットや3Dプリントシートなど未来的装備を多数搭載

メルセデスAMGは2025年8月、電動パフォーマンスカー「CONCEPT AMG GT XX」をイタリア・ナルドの高速テストトラックで走らせ、世界中の注目を集めました。このコンセプトモデルはわずか8日以内に40,075kmを走破し、25もの長距離記録を打ち立てました。走行時間は7日13時間24分07秒、平均時速は驚異の300km/hに達し、電気自動車史に新たな金字塔を打ち立てたのです。とりわけ、24時間走行での最長距離記録は14回連続で更新され、従来の限界を圧倒的に超える成果を残しました。

CONCEPT AMG GT XX definiert Performance neu: Technologieträger pulverisiert Weltrekorde in Serie | Nardò, 2025. CONCEPT AMG GT XX redefines performance: Technology pioneer shatters record after record | Nardò, 2025.

この偉業を支えたのが、先進の電動パワートレインと冷却技術です。CONCEPT AMG GT XXは3基のアキシャルフラックスモーターと直接冷却式バッテリーを搭載し、これらは来年投入予定の次世代高性能アーキテクチャ「AMG.EA」に採用されます。中でも革新的なのが「中央冷却ハブ(CCH)」です。ポンプやバルブ、センサーを一体化したコンパクトな設計により、必要な部位へ効率的に冷却を供給。走行直後の急速充電や高温下の全開走行でもパフォーマンス低下を起こさず、常時フルパワーを引き出せる点は従来EVとの決定的な違いです。さらに、車体下部に装備された受動式冷却プレートが放熱を助け、エネルギー効率と空力特性の両立に貢献しています。

空力性能の高さも記録達成に大きく寄与しました。空力抵抗係数(Cd値)はわずか0.19と、ワイドな高性能タイヤを装着しながらも市販EVの常識を超える数値を実現。低く構えたボディ、専用設計のアンダーボディ、ディフューザー、サイドブレードなど細部まで最適化されたデザインにより、安定性と効率を両立しました。高速域では全駆動エネルギーの83%が空気抵抗の克服に費やされますが、わずかなCd改善でも航続や効率に大きな効果を生むことが実証されました。新開発の20インチホイールはカーボン製エアロカバーを装着し、前後で異なる気流制御を行うことで走行安定性を確保しています。

充電技術も画期的です。欧州の充電器メーカー、アルピトロニックと共同開発した特別仕様の充電器により、平均約850kWという高出力充電を実現しました。最大1000Aを標準のCCSケーブルで送電する試みは世界初で、従来の2倍の能力を誇ります。メルセデス・ベンツは専用の高出力充電ハブをテストコースに設置し、約3カ月という短期間で建設を完了。2.5MW以上の電力供給能力を備え、走行と充電の切り替えを極限まで短縮しました。

さらに注目すべきは、F1由来のソフトウェア戦略です。バッテリーマネジメントシステム(BMS)は物理センサーと仮想センサーを組み合わせ、セルごとの状態をリアルタイムで解析。最適な速度や充電タイミングを導き出し、安定した高出力を維持しました。また「Predictive Performance Manager」はGPSと連動し、AR表示や音声でドライバーに最適な走行指示を提供。回生ブレーキポイントや空力制御の調整まで支援し、戦略的かつ効率的な走行を可能にしました。

インテリアとUXも未来志向です。ARレーシングヘルメットは速度やバッテリー残量を視界に直接投影し、夜間走行や回生タイミングを直感的に把握可能にしました。シートは3Dボディスキャンを活用し、各ドライバー専用に設計されたパッドを3Dプリンターで製作。交換も容易で、長時間走行でも最適なフィット感を維持します。外装には光る塗装セグメントやMBUXフルイドライトパネルを採用し、走行性能だけでなく視覚的なインパクトも備えています。

また、パートナー企業の協力も欠かせませんでした。ミシュランは「Pilot Sport 5 Energy」を新開発し、耐久性と効率性を両立。Microsoftは「MB.log」を用いて車両データをリアルタイムに分析し、極限状態でも安定した運用を保証しました。さらにSignifyのLED照明技術がピットやトンネル区間を安全かつ効率的にサポートしました。

「CONCEPT AMG GT XX」は、単なる記録達成車両ではなく、電動化時代における持続的なフルパフォーマンスを示す技術プラットフォームです。冷却、空力、充電、ソフトウェア、UXすべての面で革新を凝縮し、来年以降の市販AMG EVに直結する技術を多数搭載しています。メルセデスAMGが掲げる「限界を再定義する」という言葉の通り、この車両は電動パフォーマンスカーの未来像を提示する存在となりました。

【ひとこと解説】
ナルド高速テストトラック(正式名称:ナルド・テクニカルセンター)は、イタリア南部プーリア州に位置する世界有数の試験施設です。全長12.6kmの巨大な円形コースが特徴で、最高速度試験や耐久走行に最適化されています。直線に近い外周レーンは設計上ステアリング操作をほぼ必要とせず、時速240km以上でも直進状態を保てる特殊構造です。1975年に開設され、現在は自動車メーカー各社が高速耐久試験や電動化技術の検証に活用しています。

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