自然とともに生きるラグジュアリー。ロールス・ロイス「グッドウッド本社」が育む42エーカーの生命の楽園

  • 英グッドウッドのロールス・ロイス本社は、42エーカーの敷地に広がる野生生物の聖域
  • 地元自治体・グッドウッド・エステートと連携し、再野生化や生態回廊の整備を推進
  • 希少種のウォーターボールや25万匹のミツバチなど、多様な生物が共存

ロールス・ロイス・モーター・カーズは、ブランドの本拠地である英国ウエスト・サセックス州グッドウッドにおける、自然保護と生物多様性の取り組みを紹介しました。ここは世界で唯一、ロールス・ロイスの車がデザイン・製造される場所であると同時に、42エーカーに及ぶ広大な敷地が多様な動植物の生息地としても機能しています。

グッドウッドの本社は、12,000エーカーに及ぶグッドウッド・エステートの一角にあり、400,000本以上の樹木や植物が育つ自然環境の中に位置します。ロールス・ロイスはエステートやチチェスター地区議会と連携し、**生態系回廊(Strategic Wildlife Corridor)**の形成を推進。これは、サウスダウンズ国立公園からチチェスター、パガム・ハーバーを結ぶ英国初の本格的な野生動物回廊計画の一部です。

敷地内には、製造設備の冷却システムにも使われる湖があり、マガモやカモ類などの野鳥が多数生息。見習い技術者が設計・製作した六角形の浮き小屋が“ロールス・ロイス仕様の野鳥の家”として注目を集めています。さらに、敷地内には15羽の保護カモが棲みついており、訪問者は「Wildfowl Crossing(野鳥横断注意)」の看板で出迎えられます。

また、ロールス・ロイス・ワイルドライフ・ガーデンは20年以上前に設立された自然保護区で、最近では“リワイルディング(再野生化)”の思想に基づいて再設計。地域の子どもたちのデザインを取り入れた「ティギータウン(Tiggy Town)」では、絶滅危惧種のハリネズミを守るための小さな家が設置され、鳥やコウモリ、ハチの巣箱も職人の手で作られました。

特筆すべきは、2017年に設立されたグッドウッド養蜂園(Goodwood Apiary)。6基の巣箱で約25万匹のセイヨウミツバチが“ロールス・ロイス・オブ・ハニー”と呼ばれる希少な蜂蜜を生産しており、顧客や来訪者のみに提供されています。現在、この取り組みはUAEや南アフリカ、ドイツなど海外拠点にも拡大中です。

さらに、最新の生態調査では、英国で絶滅危惧種に指定されるウォーターボール(水ボウズネズミ)の生息が確認されました。車両充電設備の工事に際しても、生態学者が監督のもとで生息環境を保全しながら進められました。

ロールス・ロイスはグッドウッド・エステートとともに、在来種の生け垣造成や野花種子の収穫など、地域生態系の再生にも力を入れています。2024年に認可された本社拡張計画では、新敷地の3分の1を自然保全エリアとし、太陽光発電と緑化を組み合わせた“バイオソーラールーフ”を採用。施工前にはヘビやトカゲなど228匹の爬虫類を安全に移動させるなど、徹底した環境配慮がなされています。

ロールス・ロイスの“ホーム・オブ・ラグジュアリー”は、単なる自動車工場ではない。そこは、匠の技と自然の生命が共存する“静寂の聖域”であり、ブランドが掲げる「持続可能なエクセレンス」の象徴そのものです。

【ひとこと解説】
グッドウッド・エステート(Goodwood Estate)は、イギリス南部ウェスト・サセックス州に広がる約12,000エーカー(約48平方キロメートル)の広大な私有地で、リッチモンド公爵家が300年以上にわたり所有しています。壮麗なグッドウッド・ハウスを中心に、競馬場、自動車サーキット、航空場、ゴルフコースなどを有し、モータースポーツイベント「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」や「リバイバル」で世界的に知られます。近年は環境保全と持続可能な農業にも力を入れています。

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