・フェラーリ初のフルEV、最高出力1000cv超・航続530km・0-100km/h加速2.5秒
・75%リサイクルアルミと60件超の特許技術を採用し、CO₂を6.7トン削減
・4モーター+アクティブサスペンション+独自サウンドで新次元のドライビング体験を実現
フェラーリは2025年10月9日、キャピタル・マーケッツ・デーにおいて、ブランド史上初となる完全電動モデル「フェラーリ・Elettrica(エレットリカ)」を発表しました。これは、フェラーリの長年にわたる電動化研究の集大成であり、内燃機関、ハイブリッド(HEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)に続く第4の柱として位置づけられます。マラネロの伝統と革新が融合した、まさに“未来の跳ね馬”です。
Elettricaは、フェラーリが自社開発・自社生産した数多くの新技術を採用。60件以上の特許が投入され、ボディとシャシーには75%のリサイクルアルミニウムを使用しています。これにより、1台あたり約6.7トンのCO₂削減を実現。環境性能とスポーツカーとしての純粋なパフォーマンスを両立させました。
パワートレインは前後にそれぞれ独立した電動アクスルを搭載。前軸は210kW(最大トルク3500Nm)、後軸は620kW(最大トルク8000Nm)を発揮し、合計出力は1000cvを超えます。前後4基の永久磁石同期モーターはすべてフェラーリ社内で設計・製造されたもので、最大回転数は前側30,000rpm、後側25,500rpm。ピーク効率93%を誇る高効率ユニットで、瞬時にレスポンスする圧倒的加速を可能にしました。

Elettricaの0-100km/h加速はわずか2.5秒、最高速度は310km/h。さらに、1回の充電で530km以上の航続距離を確保。122kWhのバッテリーはエネルギー密度195Wh/kgとクラス最高水準で、最大350kWの急速充電にも対応します。バッテリーは車体フロアに完全一体化され、低重心化を実現。ICEモデル比で重心を80mmも下げ、47:53という理想的な前後重量配分を実現しました。
シャシーはフェラーリ伝統のミドシップ・ベルリネッタ構造をベースにした短いホイールベース(2960mm)設計。前方に寄せたドライビングポジションにより、コーナリング時のフィードバックをよりダイレクトに感じ取ることができます。また、クラッシュ時のエネルギー吸収を最適化するため、フロントショックタワーや電動モジュール配置にも独自設計を採用しました。
注目すべきは、フェラーリ史上初の“独立リアサブフレーム”です。これは振動・騒音を徹底的に抑制しながらも、剛性と操縦安定性を確保する革新的な構造で、走行中の快適性を飛躍的に高めています。さらに、48Vアクティブサスペンションの第3世代システムを搭載。各輪が独立して縦方向の力を制御し、コーナリングや路面変化に応じて車体を最適に制御します。
走行モードは「Range」「Tour」「Performance」の3種類を設定。さらに、ステアリング左側の「eManettino(イーマネッティーノ)」で駆動方式(AWD/RWD)や出力特性を自在に切り替えることができます。右側の伝統的な「Manettino(マネッティーノ)」では、ICE時代同様に走行スタビリティやトラクション制御を段階的に変更可能。「Dry」「Sport」「ESC-Off」などのモードを備え、日常からサーキットまで幅広いシーンに対応します。

トルクシフト・エンゲージメント機構により、右パドル操作で5段階のトルクレベルをシームレスに選択でき、絶え間ない加速感を演出。左パドルでは減速時にエンジンブレーキに近いフィーリングを再現します。これは電動車でありながら、ドライバーとの“対話”を重視するフェラーリならではの設計思想です。
音響面でも革新があり、Elettricaでは人工的なサウンドを使用せず、駆動系の金属振動をセンサーで拾い、アンプで増幅して出力する独自方式を採用。まるでエレキギターのように“共鳴”するサウンドが加速時のみ響き、ドライバーと車との一体感を高めます。
タイヤも専用開発され、転がり抵抗を15%削減しながらも、ドライ/ウェット両条件で高いグリップを維持。ドライ3種、ウインター1種、ランフラット1種の計5タイプが用意され、多様な走行環境に対応します。
フェラーリ・Elettricaは、2026年初頭に内装デザインの先行プレビューを実施し、同年春にワールドプレミアが予定されています。創業以来のDNAである“走る歓び”を継承しながら、持続可能な時代の新しい跳ね馬として誕生するElettrica。フェラーリが描く電動時代の到達点として、今、マラネロの情熱が静かに、そして力強く走り出します。
【ひとこと解説】
「ベルリネッタ(Berlinetta)」とは、イタリア語で「小さなサルーン」や「クーペ」を意味する言葉で、フェラーリをはじめとするイタリアン・スポーツカーに多く用いられる呼称です。主に固定ルーフを持つ2ドアの高性能スポーツカーを指し、空力性能や軽量化を重視した設計が特徴です。フェラーリでは「250 GT ベルリネッタ」や「F12ベルリネッタ」など、伝統的にフロントまたはミドシップエンジンを搭載したモデルに冠され、同社のデザイン哲学と走行性能の象徴的存在となっています。
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