16年の個性と革新に幕。Kia「ソウル」最後のモデルイヤーで有終の美


  • 2009年の登場以来、米国で累計150万台以上を販売
  • 独創的デザインと「ハムスター広告」でポップカルチャーの象徴に
  • 2025年モデルで生産終了、Kiaのブランド進化を支えた功労車

Kiaは2025年10月6日、米国カリフォルニア州アーバインにて「ソウル(Soul)」の生産終了を正式に発表しました。2009年のデビュー以来、米国で累計150万台以上を販売したこのコンパクトクロスオーバーは、16年にわたってKiaブランドの象徴として愛され続けてきました。2025年モデルをもって生産を終了し、その歴史に幕を下ろします。

ソウルは、Kiaの米国デザインスタジオで誕生したボクシーなコンセプトカーを原点とし、「小型車の効率性」と「SUVの多用途性」を融合させた新しいカテゴリを切り開きました。開発チームは自然番組で見た“リュックを背負ったイノシシ(boar with a backpack)”から着想を得て、力強さと愛嬌を併せ持つ独自のスタイルを形にしました。2006年の量産化においてもコンセプトの精神は失われず、2009年の市販開始と同時に注目を集めました。

Kiaの米国販売が約3倍に拡大した背景には、このソウルの成功が大きく寄与しています。Kia Americaのセールス担当副社長エリック・ワトソン氏は「ソウルはKiaが米国市場に確固たる地位を築く礎となったモデル。今日の販売記録と市場シェアの成長も、ソウルの功績があってこそ」とコメントしています。

その人気を決定づけたのが、業界史に残る広告キャンペーンです。キャッチコピー「A New Way to Roll」と共に登場した“ハムスターたち”のCMは、音楽とダンスを融合した革新的な手法で大きな話題を呼びました。ヒップホップの名曲「The Choice Is Yours」からLMFAO「Party Rock Anthem」まで、音楽に合わせて踊るハムスターは一躍ポップカルチャーのアイコンとなり、マディソン・アベニューの広告殿堂「Advertising Walk of Fame」で“Rookie of the Year”を受賞しました。

ソウルはその後も多彩なコンセプトカーを通じて進化を続けます。2009年のオープンピックアップ「Soul’ster」、2012年の250馬力ターボ+AWD仕様「Track’ster」、2015年の電動AWDコンセプト「Trail’ster」など、毎回驚きをもたらしました。2017年には市販版の「ソウルターボ」が登場し、よりスポーティな走りを実現。ソウルで得た知見は後にAWD搭載SUV「セルトス(Seltos)」の開発へとつながりました。

さらに、ソウルはSEMAショーでも常連として存在感を放ち、モバイルDJブースや移動型ミュージアム、電動アイスクリームトラックなど、創造的なカスタムモデルが多数出展されました。2019年には3代目となる現行モデル(2020年型)を発売し、より洗練されたデザインと上質な乗り味を獲得しつつ、初代から受け継ぐ“ファンで自由な精神”を継承しました。

ソウルの販売層は若年層だけでなく、精神的に“若者”であり続けたい中高年層にも支持を広げ、幅広い世代に愛される存在となりました。2025年10月に生産が終了する予定で、現在は全米の販売店に残る数千台が“最後のソウル”として販売中です。

16年間で数々の栄誉を獲得したソウルは、2009年のレッドドットデザイン賞、IIHSトップセーフティピック、そして2020年には「ワールド・アーバンカー」など、多数の受賞歴を誇ります。その独創性と遊び心は、Kiaが“若々しさと個性を重視するブランド”へ変革するきっかけとなり、今後のEVラインアップにもその精神は受け継がれていくでしょう。

ユニークで楽しい「ソウル」は、単なる小型車ではなく、KiaのデザインDNAとブランド哲学を体現した特別な一台でした。その存在は、これからのKiaのモビリティの未来にも、確かな足跡を残し続けます。

【ひとこと解説】
起亜「ソウル(Soul)」は2009年に登場したコンパクトクロスオーバーで、個性的なボクシーデザインと高い実用性が特徴です。最新(第3世代)モデルは1.6Lターボ(204ps)または2.0L自然吸気(147ps)エンジンを搭載し、FF駆動とCVTまたは7速DCTを採用。全長約4,200mm、広い室内空間と最大1,735Lの荷室を備え、日常使いからレジャーまで対応します。電動モデル「ソウルEV」もラインアップし、航続距離は最大約391km(WLTP)を誇ります。

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