- 2003年設立のスーパースポーツカー専業メーカー初のインハウスデザイン拠点が節目の20周年
- ムルシエラゴやアヴェンタドール、ウルス、レヴエルトなど歴史的モデルを通じてブランドのデザイン言語を確立
- 限定車やコンセプトカーを通じて挑戦を続け、電動化時代における新たな美学を提示
2025年10月、イタリア・サンタアガタ・ボロニェーゼに拠点を置くランボルギーニのデザインセンター「チェントロ・スティーレ」が、設立20周年という節目を迎えました。2003年に公式に発足し、2005年に最初のモデルを完成させたチェントロ・スティーレは、スーパースポーツカー専業メーカーとして初めて設立されたインハウスのデザイン拠点でした。以来、量産車はもちろんのこと、特別仕様車、コンセプトカー、ワンオフモデルに至るまで、すべての造形を統括し、ランボルギーニというブランドを形作る重要な役割を担ってきました。

創業者フェルッチオ・ランボルギーニは、1963年の創業当初からスタイリングの重要性を理解していました。350GTの登場や、1966年に発表されたカロッツェリア・ベルトーネによるミウラ、1971年のカウンタックによって、ブランドのデザイン哲学は確立されました。カウンタックが生んだ鋭いラインと大胆なシルエットは、今日に続く「六角形モチーフ」や特徴的なシルエットの原点となり、以降のモデルに強烈な影響を与えています。

こうした伝統を現代に引き継ぎ、さらに明確な「デザインDNA」として体系化したのがチェントロ・スティーレです。初代責任者ルーク・ドンカーヴォルケは、2002年に発表されたV12フラッグシップ「ムルシエラゴ」と、翌年登場したV10「ガヤルド」によって新しい時代の幕を開きました。力強く純粋なラインを持つこれらのモデルは、ランボルギーニの未来を象徴するデザイン言語を打ち出し、ブランドの存在感を大きく高めました。

2006年からはフィリッポ・ペリーニがデザイン部門を率い、ランボルギーニにさらなる飛躍をもたらしました。2007年の限定車「レヴェントン」は航空機を想起させるシャープなスタイリングと「Y字」モチーフを採用し、以降のモデルに繋がる重要なデザインコードを提示しました。2011年に登場した「アヴェンタドール」は完全に社内でデザインされた初のV12フラッグシップであり、複雑な面構成と空力性能を融合させ、世界的な成功を収めました。さらに、2012年の「ウルスコンセプト」は後の市販SUVへとつながり、ランボルギーニの新たな市場開拓を後押ししました。

その後もペリーニのチームは革新的なコンセプトを発表し続けました。2010年の「セスト・エレメント」はカーボンファイバーの軽量性を徹底的に追求した実験的モデルであり、2013年の「ヴェネーノ」は戦闘機を思わせる過激なスタイリングで話題をさらいました。これらの挑戦的なデザインは、のちのアヴェンタドールSVやウラカン・ペルフォルマンテといった市販車にも大きな影響を与えています。
2016年、ポルシェから移籍したミチャ・ボルカートが新たなデザイン責任者に就任すると、チェントロ・スティーレはさらに拡大しました。スタジオは倍の規模となり、国際色豊かな25名のデザイナーが集結。アヴェンタドールSやSVJ、ウラカン・ペルフォルマンテを手掛けるとともに、2017年にはSUV「ウルス」を完成させ、ランボルギーニに第三の柱を築きました。さらにMITとの協業によって誕生した「テルツォ・ミッレニオ」は電動化時代のビジョンを示すコンセプトとして注目を浴び、スーパーカパシタ技術を搭載した「シアン」や、過去へのオマージュを込めた「カウンタック LPI 800-4」など、伝統と未来を融合させる数々の作品が続きました。
2023年に登場したハイブリッドV12「レヴエルト」は、こうした進化の到達点といえるモデルです。戦闘機を想起させる「パイロットのように操る」コックピット哲学を具現化しつつ、独特のシルエットと「Y字」モチーフを継承。従来の緊張感あるラインに加え、部分的に滑らかな面を取り入れることで、新時代の美学を提示しました。そして2025年、20周年を記念して発表された「フェノメノ」は、史上最強のV12 HPEVとして未来のデザインを体現するマニフェストとなりました。
チェントロ・スティーレは自動車デザインにとどまらず、アド・ペルソナム部門を通じて多様なカスタマイズを提案し、またヨット、建築、ファッションなど異業種とのコラボレーションを通じてデザインDNAを拡張してきました。さらに3DプリンティングやAIといった先端技術を導入しつつ、伝統的なクレイモデルづくりと融合させ、柔軟かつ革新的な手法を確立しています。
ボルカートは「我々は常にトレンドを追うのではなく創り出す側でなければならない」と語ります。国籍や文化の異なる多様なチームを束ねるのは、ランボルギーニというブランドへの情熱と挑戦心です。60年以上に及ぶ豊かな伝統を土台にしながらも、未来を切り拓く姿勢を失わないことこそが、チェントロ・スティーレの真髄といえるでしょう。設立から20年を経た今、ランボルギーニは伝統と革新を同時に体現し、次の20年に向けてさらなるデザインの高みへと挑戦を続けています。
コメント