ロールス・ロイス、グッドウッド・リバイバル2025で「ファントム」誕生100周年を祝福。歴代5台を特別展示

  • ファントム誕生100周年を記念し、歴史的モデル5台をエアロドローム・ローンに展示
  • 「ファントム・オブ・ラブ」や王族専用ファントムIVなど希少車が勢揃い
  • コースカーとしても登場、走りと存在感で“世界最高の車”の伝統を披露

ロールス・ロイス・モーター・カーズは、2025年9月に開催された「グッドウッド・リバイバル」において、ブランドを象徴する最高峰モデル「ファントム」の誕生100周年を記念しました。1925年に初代「ニュー・ファントム」が誕生して以来、100年にわたり進化を続けてきたこのモデルは、卓越した技術、比類なき快適性、そして個性的な表現力によって、自動車史と文化史の双方において大きな役割を果たしてきました。今回のイベントでは、その輝かしい歴史を象徴する5台のファントムがエアロドローム・ローンに展示され、多くの来場者を魅了しました。

まず注目を集めたのは、1926年製の「ファントムI ブロウアム・ド・ヴィル」、通称「ファントム・オブ・ラブ」です。この車両は、ウールワース財閥の相続人であるモード夫人のために、夫クラレンス・ウォーレン・ガスクによって特注されたものです。18世紀フランス様式の美学が色濃く反映され、オービュッソン織のタペストリー、手描きの天井装飾、金箔を施したコーニス、フランス製のオルモル時計と磁器の花瓶をあしらったドリンクキャビネットなど、贅を尽くした内装は「走る芸術品」と称されるにふさわしい存在感を放ちました。

続いて展示されたのは「ファントムII コンチネンタル・ツーリング パークワード」。これは当時のロールス・ロイス創業者ヘンリー・ロイス自身が高速ツーリング用に開発した試作車をベースにした市販モデルで、スムーズで直線的な欧州の道路を長距離高速走行することを目的に設計されました。車重や空気抵抗の低減といった性能面を重視しつつ、快適性も確保した稀少なモデルです。今回展示された個体はアメリカの実業家A.Y.ガウエン氏が所有していたもので、ヨーロッパ旅行用に特注されたサンルーフと黄色のサンバイザーが特徴です。

1937年製の「ファントムIII」も登場しました。このモデルはV12エンジンを搭載した初のファントムであり、当時としては先進的な技術と静粛性を備えていました。今回の展示車両はロンドンのメジャー・フレデリック・ウォーレン・パールによって新車注文され、その後アメリカに渡ったのち1989年に再び英国へ戻り、1995年から現オーナーの手に渡っています。徹底的なレストアを経て、往年の姿を蘇らせた1台です。

さらに希少性で際立つのが「ファントムIV ランドーレット」です。1950年から1956年までにわずか18台しか生産されず、王室や国家元首のみに供給された特別なモデルです。シルバー・レイスをベースにしながらも23.5インチ延長されたシャシーを持ち、直列8気筒エンジンを搭載した唯一のロールス・ロイスとしても知られます。現在も英国王室によって公式行事で使用されており、その存在自体がロールス・ロイスの威厳と格式を物語っています。

最後に披露されたのは1964年製の「ファントムV」。ジェームズ・ヤング製のコーチビルドが施された優美なボディを持ち、オリジナルのミッドナイトブルーに輝くこの個体は、マークス&スペンサーの会長であったロード・マークスのために製作されました。納入以来わずか92,000マイルしか走行していない良好な保存状態が特徴で、歴史的価値の高い一台です。

これら5台の展示に加え、イベント期間中には4台のファントムがグッドウッド・モーターサーキットにおいてコースカーとして走行。各レース間に登場し、100年の歴史を超えてなお「世界最高の車」と称される理由を観客に実感させました。静粛かつ力強い走行、そして比類なき存在感は、現代の自動車文化においても揺るぎない魅力を放っています。

ロールス・ロイス コーポレートリレーションズ部門責任者のアンドリュー・ボール氏は「ファントムほど自動車史と文化に影響を与えたモデルは存在しません。1925年のオリジナルから現在のビスポーク・モデルに至るまで、その技術、快適性、そして表現力は時代を超えて繋がっています」と語り、この100周年がブランドの継続的な革新と伝統を象徴する節目であることを強調しました。

ロールス・ロイスは2025年を通じてファントム誕生100周年を記念する様々な取り組みを展開しており、今回のグッドウッド・リバイバルでの展示と走行は、その集大成といえるものです。歴史的名車と現代のファントムが同じ舞台で披露されることで、ブランドが築いてきた「世界最高の車」という称号が、単なる過去の栄光ではなく未来へ受け継がれる生きた伝統であることを改めて示しました。

【ひとこと解説】
グッドウッド・リバイバルは、イギリス南部チチェスター近郊のグッドウッド・サーキットで毎年開催されるクラシックモータースポーツイベントです。1948年から1966年までの往年のレーシングカーやバイクが当時さながらの姿で走行し、観客や参加者もヴィンテージ衣装で参加するのが特徴です。単なるレースではなく、自動車文化と英国のライフスタイルを再現する祭典として世界的に人気があり、歴史的車両の保存と継承を体感できる場となっています。

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